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 昔の話になる、朝日新聞社編『朝日年鑑』というのがあって、その別冊に「(日本人)人名録」があった。図書館で確認したら、おそらく1977年版。横書きページ3段組で、氏名・生年月日・分野・肩書き・住所などが一人当たり数行があてられている。ふと、個々人の年齢を割り出してみようと思いついた(26歳のとき)。そして、3日間その作業に集中した。約6千人。コンピュータの時代でなく、すべて手作業だ。関取(大関)「貴ノ花」が(わたしと同じトシだったので覚えていた)若者で載っていたが、それは例外で(おそらく最年少)ほとんどは年寄りばかりだった。当時の資料を残していないので記憶でしかないが、掲載者を棒グラフにするとの67歳や68歳にピークがあり、その前後も多かった。日本を動かしているのはこんな年寄りなのか! と、衝撃だった。だから、覚えている。

 次に『理科年表』で平均気温の日々変化のグラフをつくった。コンピュータがあれば一瞬にして終わる作業を、これも丹念に、1ミリ方眼用紙にプロットして描いた。一番寒い日は立春だということを発見した。立秋に対応する8月上旬に暑いピークがある。「この日より寒い日はありません。明日からは、春に向かって進みます」というのが立春なのだと悟った。立秋に同じ事があてはまる。二十四節気(にじゅうしせっき)に関心が及び、やがて「季節週」に辿りついた。

 「ビッグデータ分析によると……」というニュースが空気のようにスピーカーから吐き出される。データを分析するには時間がかかる。それが”ビッグ”になると、もはや人生のすべてをかけてもかなわない。神戸空港から仙台空港まで1時間もあれば飛ぶ。便利でありがたい。航空機の安全もビッグデータで保障されているのだろう。
 一方、かつて東京へ行くときは、昼バスをよく利用した。夜行は消灯されてしまうから眠るしかない。昼バスは低料金だし、本が読める。人によって違うだろうが、夜行は疲れるが昼バスは隣町に行くような気分で、わたしには合っていた。

 便利・快適さ、20キロの道程を5時間かけて歩いてもいる。「自分サイズ」がいいのだろうなあ。

 斉藤淳『10歳から身につく問い、考え、表現する力』p21//〔大学の〕専門分野で画期的な成果を上げるためにこそ、広い分野に関心を持つことが必要だ//とし、教養課程は単なる”教養“ではなく、意味ある重要な課程としている。なんでもコンピュータで解決可能のように、あるいは”希望や夢”があるように思わせられる今日、高校に「脳神経の基礎教養」を新設して1年間ほど学ぶのがよいのではと思う。

2024.2.15記す

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