||||| わたしの授業(保育士養成校)|||

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 理想の教師とは? ──教室のドアを開けて教壇に立ち、何も言わず、何かを待つ。それから、どうなるか?── かつて若い頃に考えた。と言っても、教師志望ではなかった。大学は中退したし……。誰かに何かを教えるということを好まなかった。58歳のとき保育士養成校の教員になり、やがて「先生」と呼ばれることに慣れてしまった。教員免状をもっていないけれど、専門学校(専修学校)では特色の有る経歴があれば認められているということであった。
 講義時間90分のうち、20分、30分経つと、予定していた内容をほとんど話してしまい、さて、どうしようということになる。積極的な学生が質問してくれると幸いで、時間がもつ。ということは、質問が出るような講義をしなくてはならない。落語家は噺がどれほどに受けているかを気にしているという。その反応は0.2~0.5秒だ。「微表情」というらしい。正式名称かテキトーな呼称か、知らない。あかちゃんは微表情を読み取る。主にママの微表情だろう。
 講義を聴いている学生の微表情をわたしは窺う。そのタイミングで質問があると、とてもありがたい。感謝!
 保育士養成校では単位取得で国家試験免除となり卒業と同時に保育士資格がとれる。国家試験による取得はけっこうむずかしい。だから、2年の履修で資格取得は早道だが、必要単位数が多いので、学生はなかなか大変だ。だから、わたしは、授業時間90分に集中し、予習も復習もほかの教科に使えばよいと、学生にはありがたいはずの授業をしている。その科目名は「自然と外遊び」。

 担当科目名に「遊び」が含まれている。科目名称(内容)にかかわらず、”すべて”の科目で「遊びが大事」といわれる。では、その大事な「遊び」をどう捉えたらよいかとなると、じつはこれが難問なのである。
 「自然」は専門的領域になるので、何に関心をもつかをチョイスすればなんとかなるが、「遊び」についてはそうはいかない。すべての教科が「遊びが大事」というのは、対象が幼児だからである。いうなれば「幼児の遊び」ということになる。すると、では「幼児」とは何か?ということになる。遊びのむずかしさよりも、この「幼児」にどう向き合うかがむずかしい。そして、わたしは、遊びよりも《「こども」とは、だれか?》に講義日程15回を費やしている。「子ども」がわかれば「遊び」は導き出せる。そして、ホンネを言うと、「子ども」に対する認識や考え方は、おそらく教師のあいだで一致を見ることは多くないと思っている。
 だから、わたしは、学生の質問に期待している。学生の「子ども」に対する見方が表れるから。

 ところで、教室にいる学生の数は昨年10人、過去多いときで22人という極めて少数、経営的に厳しい環境だが、学生との距離はなく理想である。微表情というものは有効的に働いた。しかしながら、人数が少なければ良いというものではないと、わたしは思う。順序として、「子ども」に対する認識を自身の考えに照らしその上で「遊び」の意義をどのように考えるのか、この過程をそれぞれの個人において積み上げて行くことが求められる。こうした成果が生み出せるような授業をこころがけたい。

神戸こども総合専門学院(保育士養成校)

2024.3.1記す

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