||||| ジェインズ『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』 |||

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 ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』紀伊國屋書店 2005年。著者の「想像力」に驚いている。「創造」ではない。クリエイティブではなく「イメージ」する力に驚いている。

p164
//たとえば「ワヒー!」が、かつては切迫した危険を意味していたとすると、叫び声の強さによってさらに区別が起これば、トラが接近した場合は「ワキー!」、クマなら「ワビー!」と叫んだかもしれない。//……//紀元前2万5000年から紀元前1万5000年の間の、いずれかの時点で現れたのかもしれない。
 これはただの憶測ではない。//
 「ワヒー!」も「ワキー!」も「ワビー!」、これらの表現はさすがにフィクションだろう。迫った危険を仲間に知らせるため、言語はまだなかったが「叫び声」で報せ合った。言語の始まりの一つは「叫び声」だったという。叫び声だったものが、組織的な必要が高まり「命令」を意図することになった。
p163
//たとえば、切迫した危険を知らせる呼び声は、最後の音素を変えながら、より強く発せられる。トラが目前に迫ってきた場合は、「ワヒー!」と叫ぶ一方で、トラが遠くにいる場合はそれほど強い叫び声を上げたりはせず、「ワフー」のように、違った終わり方で叫んだかもしれない。つまり、このような語尾が「近い」と「遠い」を意味する最初の修飾語となる。そして次の段階では、このような語尾「ヒー」と「フー」が、それらを生んだ特定の呼び声から離れ、同じ意味を保ちながら別の呼び声につけ加えられるようになる。//
p164
//まず修飾語、続いて命令語、そしてそれが定着して初めて名詞へと発展していったのは、たんなる偶然の順序ではない。//
 個人的な勝手な想像ではなく、考古学的証拠を根拠としている。それにしても、そこまで類推できるのか!と驚く。

 驚きは、こんな程度で済まない。呼び声(叫び声)を受けとめ、命令されて、ヒトはやがて集団を為した。集落人口が200人もあったらしいと推測される遺跡もみつかっている。集団をまとめる”知恵(指導力)”は幻覚であったり幻聴だった。個々人の意思(意識・考え)はまだ “なかった”。幻覚や幻聴は、個々人の脳から発せられていた。その指示に従って農業が興り、文明が発生した。幻覚や幻聴の主(正体)は「神」または「神々」であった。
 //現代の統合失調症によく似た、幻聴の声との対話//(p232)

 著者はプリンストン大学(アメリカ)心理学教授で1920年生まれ。現代の書である。注釈部分を除き、本文は568ページもあり、三部構成のうち、第一部を読み終わったところだ。脳の左半球は、所有者自身の脳だが、右半球は「神」が”支配していた”(”されていた”という”被害”ではない)という。脳神経の勉強をかなりしたつもりだが、こんな説に出会うとは夢にも思わなかった。スゴイ!としか言いようがない。受け入れられるか半信半疑だったが、思想家・武道家など肩書きの多い論客、内田樹(うちだ・たつる)は、//私はこの考想はきわめて生産的なものだと思う。// と評価している。

 乳幼児の生得性を調べるなかで、この本に出会った。読み終えたら、わたしは宗旨替えするかもしれない。分厚い割には読みやすい。かといって、怪しい本でもない。真面目な研究をしているスゴイ学者がいるのだと驚嘆している。
 そうそう、《右脳マインドと「豊かさ」》を書いていた。

2024.10.1記す

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