||||| 冒険と探検 |||

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 野外活動施設や、子どもを対象とした遊戯施設では「ぼうけん/たんけん」を施設やイベントの名称によく使用されている。親しみやすさ基準で、深く検討したわけでないだろう。それはそれでよいが、私はその延長線上で使用していない。
 前人未踏の冒険や単独行と報道で知るとき、補給が無いなど冒険の過酷を想像する。しかし、実際は多くの支援を受けて「冒険」は成立している。資金や資材確保の支援によって冒険は支えられている。冒険者がめざそうとしていることに、冒険の当事者でない多くの人が目的に賛同している。探検は、過酷・危険について冒険と差異のないこともあるが、学術探検とも称されるように、未知の分野を開拓しようという研究心でもって周到な計画が用意され実施に及ぶ。

 胎内から生まれ出ようとするとき、その出産において、母も子も冒険なのだ。産科の医師は先進国の日本においてもそのように認識し教育されている。子が誕生したとき、母の無事を同時に確かめ安堵しているはずだ。
 あかちゃんは、いのちを生ききるために五感をフルに活用している。──あかちゃんは冒険家として生まれた──と私は形容している。その冒険家は、愛という名の支援を受け、やがて探検家になる。園庭を裸足で這うあかちゃんは冒険家で、山道を歩く幼児は探検家なのだ。だから、〈おとな〉は、冒険するあかちゃんや、探検に臨む幼児を、後方からサポートしよう、と呼びかけたい。

あかちゃんは”冒険家”として生まれた

たんけん(探検):ぼうけん(冒険)、何が違う、何が同じ

 子どもが「たんけんごっこ/ぼうけんごっこ」をするとき、どちらの言葉をつかってもかまわないだろう。「○○ごっこ」なのだから、どちらであってもそう変わりはしない。
 しかし、「冒険家」は命を賭けている。真剣なのだ。無謀とは一線を画している。が、無謀と思われてもいいと覚悟しているのが冒険家だ。

 免許や資格取得、経歴(学歴)取得に変貌してしまった「大学」だが、すぐさま役立つかどうかわからない基礎研究に勤しむのが大学の教育であり研究であったはずだ。大学院も、そこで取得する博士号も、一部だろうが経歴(学歴)取得に陥っているのではないか。
 学術研究の多くは、遡れば冒険者の恩恵を受けている。事実、今日でも冒険を理解する多くの人たちは、資金と心の支援を送っている。冒険は、冒険者ひとり、あるいは少人数のグループだが、冒険を成功させる(失敗しても)陰では、多くの人たちに支えられている。初めて行うことを非難する人はいるものだ。この場合の「非難」は価値観や世界観が異なることから生じるのであって、非難がよくないということはない。それを超えて、冒険の意味する目的を理解できる人たちでこれが成立する。
 「冒険」と「探検」は、どちらも、先行する人たちがいないか少ない分野に挑戦することだ。探検も命がけのこともあるだろうが、比較して考えるならば、冒険は前人未踏だが、その冒険がもたらした成果を受け、学術的な仮説を複数想定できるというのが「探検」といえるだろう。

 唐突だが、あかちゃんが母から生まれ出てくるさま、それからの数日あるいは数か月は冒険者ではないか。多くの人に見守られ、手を差し延べられて、あかちゃんは育つ。そのあかちゃんが寝返って這い這いし、何かをつかみ、口にもっていくそのさまは探検者と思える。
 野外活動が初めての頃、3歳の頃は冒険者で、5歳になってしまうと探検者だなあと思う。かわいいけれど勇ましい冒険者なのだ。
 少し批判がましいことを言わせてもらうと、小学校に進み教育を受けると、冒険はもとより探検でさえも控えるように指導する先生を見受ける。「教育」は、冒険に始まる探検をめざす心を育てて欲しいと思う。
 冒険する心を忘れない小学生高学年を目標として欲しい。あかちゃんのスタートは誰にも同じであるように、どの子にもわけへだてなく、探検する〈おとな〉を待望したい。

  1. 立ち止まっていても何も動かない。
  2. 自分に出来ることは小さいことでも少しずつやってみる。
  3. 先が見えないと不安だが、だからこそおもしろい。
    • (先の見えない人生を選ぶ)
  4. 一瞬の大きな喜びが明日への力となる。
  5. 決断のとき、心の比重の重いほうへ行け。
    • (何が起ころうと悔いが残らない)
  6. 自然は自分でも知らなかった自分を教えてくれる。
  7. 今日何かいいことあるかもしれない、そう信じて朝の一歩。
  8. 耐えて耐えて悲しくなっても耐えていけ、またいいことあるから。
  9. 一つのことをやりとげれば新しい目標が見えてくる。
  10. 野に食べ野に宿り野を歩く野人になれ。
    • (どこでも生きていける)
  • リヤカーマン 地球一周4万キロを歩いた男
  • 永瀬忠志
    • 2006年 毎日新聞社
    • 目次
      • 南米大陸縦断 2003
      • 日本列島縦断 2004-05
      • リベンジ南米 2006

プロフィール | 永瀬忠志

  • 1956年2月15日 島根県出雲市生まれ
  • 1974年3月 島根県立出雲工業高等学校機械科卒業
  • 1978年3月 大阪産業大学工学部機械工学科卒業
  • 2006年2月 「2005年 植村直己冒険賞」を受賞
  • 1974年 自転車で日本一周 7500km。
  • 1975年 リヤカー「大佐エ門」を引いて、日本縦断 3200km
  • 1978-79年 リヤカー「田吾作」を引いて、オーストラリア大陸徒歩横断 4200km
  • 1989-90年 田吾作3号を引いて、アフリカ大陸・サハラ砂漠を歩く 11100km
  • 2003-04年 田吾作4号を引いて、南アメリカ大陸を縦断 8800km
    • ほか……

武田文男 1999年『冒険物語百年』
── 平均5ページで全49話(文庫本)

ヤノマミ編〈 母に抱かれて人間となる 〉

21.1.7記す

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