||||| 新渡戸稲造『武士道』第6章:礼 |||

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他者をおもいやる〈礼〉

 漢字1文字が続く。〈義・勇・仁〉の次は〈礼〉。//礼儀は仁愛と謙遜の動機より発し、他人の感じに対するやさしき感情によって動くものであるから、常に同情の優美なる表現である。//
 要するに、相手を思う気持ちの表れが「礼」ということだ。保育園での活動も、必ず挨拶から始まる。終わるときも挨拶で終わる。帽子をかぶっているときは「帽子をとって」挨拶する。挨拶は、目と目をあわせて行う。//人に挨拶する時にはいかに身を曲ぐべきか、いかに歩むべきか坐るべきかは、最大の注意をもって教えられ、かつ学ばれた。//
 //礼儀作法は枝葉末節に至るまで詳細に規定せられ、したがって流儀を異にする諸種の流派が生じた。しかしながらこれらはすべて窮極の本質においては一致しているのであって、最も著名なる礼法の流派たる小笠原流宗家〔小笠原清務〕の述べたる言葉によれば、「礼道の要は心を練るにあり。礼をもって端坐すれば兇人剣を取りて向うとも害を加うること能わず」と言うにある。//

 //最も簡単なる事でも一の芸術となり、しかして精神修養となりうるかの一例として、私は茶の湯を挙げよう。// と、ある。茶の湯の作法は //その方式が結局時間と労力とを最も略(はぶ)くものである// とも、ある。
 贈り物をするとき、アメリカ人は「これは善い贈物です。」と主張する。しかし、日本人はそう言わない。なぜか。これは省略する。関心のある向きは本書を手にされたい。

2019.11.18記す

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