|||||「遊びの発生」ショック |||

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 遊びの「重要性」については、その意味(検証)を求めながらも、確信から外れることがない。「遊ぶことで育つ」という表現をつかうとき、あかちゃんの這い這いも「遊び」に含めていた。からだを動かしてさえいれば、それでいいのか? 疑問をもたなかったわけではなかったが、否定するまでもないとやり過ごしてきた。

デズモンド・モリス『裸のサル』角川文庫 p139
//赤んぼうの最初の笑いのたねは、母親による「いない、いない、ばあ」「お手々パチパチ」「立っち、おすわり」「高い高い」などである。すこしたつとくすぐりが主要な位置を占めるようになるが、これは6か月以後でないと現われない。これらはすべてショックを与える刺激であるが、「安全な」保護者によって加えられる。子どもはすぐにそのような刺激をひきだす方法を学習する──たとえば、かくれんぼでは子どもは発見の”ショック”を経験し、追いかけっこでは捕えることのショックがある。//

 動物行動学者モリスが、極めて具体的に遊びの”中身”を記している。ここでは「笑いのたね」という扱いだが、母から受けるショック(刺激)を「安全」と受けとめられるようになる機序がこの前段に記述されている。
 安全か危険かの区別で母の表情が変わり、あかちゃんはその機微を受けとめる。その根拠は、大脳基底核にあることは、すでにわたしは学習済みだった。つまり、生得的に(生まれながらにして)表情を読み取る能力を備えている。その安全サインを背景に、「いない、いない、ばあ」などの「遊び」が発生するという。
 あかちゃんは自身の顔を手で隠し、遊びをひろげる。その場面で、母はわが子と遊ぶ。

 //泣くことは誕生時から存在するが、笑いは3か月または4か月まで現われない//p137 とある。泣く→?→笑う。泣くと笑うに時間差があり、そのあいだに「?」期がある。「?」は「ほほえむ」。あかちゃんは生まれてまもなく、口がゆるんで広がり、笑ったようにみえる表情をあらわす。これが「ほほえむ」だが、モリスは延々と「笑う」と区別したうえで「ほほえむ」を説いている泣く→ほほえむ→笑う、と発達が見られ、「笑いの起原」に伴ってほぼ同時に「遊びを発生」させる
 驚いた。とうとう「遊び」の起原・正体をつかんだ思い。身の危険を感じとる大脳基底核に由来し、それが「いない、いない、ばあ」に接続されることに感動してしまった。

 「チョムスキーの言語理論」の学習はまだこれからだが、チョムスキーは、言語のはたらき(起原)は生得的としている。泣く→ほほえむ→ 笑う|遊ぶ(言語の表出)の式がわたしのなかで成り立つ。3年前の2020年、「心の理論」に出会って「心の理論」ショック。こんどは、「遊びの発生」ショックに辿りついた。

2023.7.15記す

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