- 幼少時の思い出から
- じゃんけんでつかう掛け声
- 文献:加古里子『伝承遊び考 4 じゃんけん遊び考』小峰書店 2008年
- かこさとしは「じゃんけん掛け声」を、「一般型」と「いほげあ型」の2区分し、後者は次のとおり、頭文字の1音を採っている。
- い……いも型
- ほ……北海型
- げ……げた型
- あ……アメリカ型
- 加古里子が蒐集した「じゃんけん」の原資料は10万余に及ぶ。詳細は、《加古里子(かこさとし)がいう「遊び」の意義》を参照のこと。
- かこさとしは「じゃんけん掛け声」を、「一般型」と「いほげあ型」の2区分し、後者は次のとおり、頭文字の1音を採っている。
(話題)世界じゃんけん大会で優勝した話
(参考)二択と三択と、三番目の選択肢

一般型
文献に収録されている「じゃんけん掛け声」のうち、
(主に)「兵庫」で採取されたものを手がかりにした一覧
区分け「兵庫」では日本海側も含まれる。私が育ったのは瀬戸内海や大阪湾側なので文化圏が相違する。区別の方法がないので列挙し、記憶で呼び出せるものを太字にした。
区切り「/」に続く部分は、「あいこ」(相ケン句)になった場合の掛け声。段下げ表示は、蒐集されている掛け声に触発されて思い出したもの。
- いし かみ はさみ
- いっ さん まかほい
- いんけん き
- いんじゃんで ぼす
- いんじゃん ぴ
- いんまい ほい
- うずまき じゃんけん みなごろし / しっしの し
- おってん とす
- ぐーちー ぱ
- ぐんかん ちんぼつ はれつ
- ぐんかん ぐんかん はれつ
- じゃいけん ぐーちーぱー
- じゃいけん じゃらけつ おこめでほい
- じゃいけん ちっそー / あいこ なって ほい
- じゃい けんで ほい
- じゃいけん でほい へのかっぱ / あいこい きってほい
- じゃいけんで ほーいの ぺんかっぱ
- じゃいけん ほい
- じゃいけん ほし
- じゃいけん ぽん / なーらん ち
- じゃっ ちん ほい(ぽす)
- じゃらけつ あいすくりん ほい
- じゃらけつ あんころもち ほい
- じゃらけつ おけつで じゃんけん ほい
- じゃらけつ すっぽんぴ / すっぽんぴ すっぽんぴ
- じゃらばす とんで きゅ
- じゃら ぼすたん けけっ
……休憩……
注意深く読まないと似ていて、間の取り方もあり、記憶にあるような・ないような……。迷いが生じる……。鮮明に?思い出せることがある。「♪じゃんけん ほい」よりも「♪じゃいけん ほい」をよく使ったように思えてきた。そして、一通りではなく、確かに、いろいろ使っていたと思う。リーダー格が何を言い出すかで決められていたと思う。掛け声がときにおもしろく、笑いながらじゃんけんをしたことが再々と思う。
- じゃんけん じゃばすけ あいすくりんで ほい
- じゃいけん じゃばすか ほっかいどうは さむい
- じゃんけん ほい / あいこで じゅ せん ぴ
- じゃんけんで ほい / あいこで しょ
- じゃんけん ぽい
- じゃんけん ほいの ぺん かっぱ
- じゃんけん まけても おこり なーし
- しゅう けし けん
- しゅっ しゅで しょ
- じゅっ せん ぴー
- じゅん へん ぽん
- しょっ しょで しょい
- せっせっ せ はらりこせ いし ふろ はさみ
- せっせっ せ はらりこせ いし かみ はさみ
- ちー けっ た
- ちー とっ て
- ちす ぱす があーす
- ちん りん さい さいのみ さい
- でーす きんた だっちょの こ
- でっこで ほい きんたで ほい
- でっ こんで でっ でっ
- でっ ちん ぺ(ほい)
- でっ こん まーら にゅうだこ すべりだこ
- でん こ まら にゅー
……休憩……
「で」から始まる掛け声は、「兵庫」採取が多い。私が1970年代に体験した「でっちん げ」はこれに属するように思う。
あるニュータウンでの台詞「でっちん げ」
大規模なニュータウンが出来、新設の小学校がいくつも開かれる。1960年代に始まっただろうウェーブは今にも続いている。小学生の場合、転宅前の「じゃんけん掛け声」はそれぞれに違っていたはずだ。台詞もテンポも音調も。しかし、バラバラのままでは勝負は出来ない。では、どのようにして、どういう経過を辿って、ひとつの掛け声に定まるのだろうか。
神戸市須磨区のあるニュータウン(1970年代)で子どもたちが唱えた台詞は「でっちん げ」だった。「あいこでしょ」に相当する台詞は「げ」の1音だった。一度で勝負が決まらないときは「げ、げ、げ、……」と繰り返された。複数の掛け声があっただろうと推測するが、定かではない。
- ばっ ちき おんり
- ばっ ちき ほい
- ほー らで ほい
- れっ そん ほい
相ケン句のみを取り出した場合
- / しっ しの し
- / じっ せん ぴ
- / じゅっ せん ぴ
- / しゅる けん ぱ
- / すっ ぽん ぴ すっ ぽん ぴ
- / ちん りん さい さいのみ さい
- / なー らん ち
長くなるもの(中詞型:長詞型)
- いんじゃん おけつで ぱいなっぷるで ほい
- いんじゃん じゃあぶすで よーろっぱじゃ ほす
- じゃんけんで ほいの さっぽろ びーるの へのかっぱ えびせん
- じゃんけん ほい への かっぱの かきの たね
- じゃんけん じゃばすけ とうきょうあいす あいこで あいすくりーむを こうてきて おいしかった じゃんけん ぽん
- いんばん どんがらがった じゃすとん ぴーなつ かれーらいす すきでも ないのに もう いっぱい
- せぶん いれぶん ええきぶん かえりは さいふも ぜろせぶん

いほげあ型
加古里子が「いも型」と名づける掛け声
- じゃんけん じゃがいも さつまいも
- じゃんけん じゃがいも ほっかいどう
- じゃんけん ほかほか ほっかいどうの じゃがいも
- いん じゃん じゃがいも さつまいも
- じゃんけん じゃがいも さつまいも あいこで あめりか よーろっぱ
- じゃんけん じゃがいも じゅーすのみ あいこで あいすくりーむ ふたつたべ
- じゃんけん じゃがすけ ほっかいどうは さむいぞ ほかほか じゃがいもは うまいぞ
加古里子が「北海型」と名づける掛け声
- じゃんけん ほかほか ほっかいどう
- じゃんけん じゃばすけ ほっかいどうは あついなの はんたいで あいこで あいすくりーむ あめりかよーろっぱ
- じゃんけん ほかほか ほっかいどう あいこで あめりか よーろっぱ かっぱの おじさん かみさんぼん さんじの おやつは おいしいな ならの だいぶつ まだおおきい いしかわごえもん おおどろぼう ぼうさん おきょうを なんまいだ
……休憩……
こんなにも長い掛け声で遊んだのだろうか? 掛け声のなかで、「あめりか」「よーろっぱ」「じゃんけん じゃがいも」「じゃばすけ」「ぱいなっぷる」「……」と文節にすると、口にした覚えもある。こうした長い句が記憶で採取されていることから、子どもの集団における、一日当たりの「遊んでいる時間の長さ」に加えて、「遊ぶ機会の頻度」が多かったことを類推できる。
加古里子が「げた型」と名づける掛け声
- いんじゃん ぽっくりげた さつまいも
- じゃんけん じゃばすけ ひやりげたばこは おいしか ろうそく いっぽんたてた
げた(下駄)は今では珍しくなってしまったが、子どもの履き物だった。
加古里子が「アメリカ型」と名づける掛け声
- じゃんけん ぽん あいこで アメリカ ヨーロッパ

「じゃんけん」は、手を出しあって行うだけでなく、足、口(声)、腕、からだ全体などいろいろとあり、手で行う場合は三すくみだけでなくいろいろとあり、これらを含めると極めて豊富に存在する。したがって、詳細は加古里子の文献を参照されたい。図も豊富で理解が進む。
うら おもて てっての て
てのひらを、おもて・うらと交互に返し、組み分けにつかった。三択でなく二択だ。幼い子どもを加えて遊ぶとき、わかりやすいのでしばしば採用された。「じゃいけん しよう」ではなく「うらおもて しよう」と誘い合ったものだ。
加古里子の本書では p263に「しろくろじゃん」の見出しがつけられて記載されている。
2021.5.30記す